−i-modeってウイルスに感染するのかなぁ?−現在、多くの携帯電話機ではインターネットメールいわゆるe-mailを受信できます。しかし、携帯電話専用のアンチウイルスソフトなんてものはどこにもありません。パソコンのユーザ数より携帯電話ユーザの方が遥かに多いのに、なぜ携帯電話ウイルスが登場しないのでしょうか。
ここでは、盲点ともいえる携帯電話のセキュリティを詳解いたします。
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■Java対応携帯電話で感染実験
IPA(情報処理振興事業協会)が平成14年に、興味深い実験を行いました。携帯電話がコンピュータウイルスに感染するかどうかの実験です。実験環境としてJavaアプリケーションの動作する携帯電話を用意して、以下のJavaウイルス(不正Javaプログラム)を実験対象としました。

 ・Homer(ファイル改ざん、システムの不安定化)
 ・Hijacker(Linux環境にてルート権限を剥奪するバックドア型ワーム)
 ・Attacker(systemファイルの改ざん)
 ・StrangeBrew(世界で初めて見つかったJavaアプレット感染型ウイルス)
 ・Bean Hive(多くのバグを持つ不完全なJavaアプリ/アプレット感染型ウイルス)

実験手順は、以下のとおりです。
1.Javaウイルスを携帯用アプリに変換してWebサーバに置く
2.携帯電話で上記のWebサーバにアクセスしてウイルスアプリをダウンロードする
3.携帯電話でダウンロードしたウイルスアプリを実行して挙動を観察

■実験結果
 ・Homer/Hijacker
  →FileOutputStreamクラスを利用する不正プログラムであるこの二つは、携帯電話にその機能がライブラリに存在しないために、起動直後に終了してしまった。ファイル改ざんやデータ破壊は不可能であった。また、Homerのような外部プログラムは根本的に実行することは不可能であった。
 ・Attacker
  →Fileオブジェクトを利用するプログラムも、携帯電話自体がその構造を持たないために実行不可能であった。
 ・StrangeBrew
  →RandomAccessFileクラスを使うJavaウイルスも実行不可能であった。
 ・Bean Hive
  →File操作を行うJavaウイルスは全く動作しなかった。

以上のように、File・FileOutputStream・RandomAccessFileなどのウイルスを動作させるためのクラスが携帯電話には存在しないため、ファイルを改ざんしたり感染したりする不正プログラムは動作できませんでした。i-modeに実装されているJavaを起動させるプログラムは、機能に制約があるた
め、そのJava仮想マシンのセキュリティは非常に高く、DoCoMoをはじめとする携帯電話端末ではJavaウイルスの心配は全くないと言えます。

■ウイルス以外の脅威はないの?
ウイルス以外にも、不正侵入やDoS(サービス停止)攻撃などの脅威が存在しますが、ウイルス同様これらの脅威は携帯電話には関係ないのでしょうか?既述のとおり、携帯電話端末はネットワーク機能が制限されているため、インターネット既存の脅威に対しては高いセキュリティを確保しています。しかし、FOMAなどのWCDMA方式を利用する端末や、PHSの常時接続端末などの普及も目まぐるしく、より高度なサービスを受けることが可能となってきました。これらの高度なサービスを利用するためには、専用ハードの枠を超えたOS(WindowsやLinux)が必要となってくるでしょう。確かに専用OS(ザウルスなど)も進化を遂げていますが、マーケットの拡大を狙った製品は、やはりWindowsOSを利用してくるでしょう(ソフト開発にも時間がかかりませんし、メリットが沢山あるからです)。そうなってきたとき、それは攻撃者にとってのマーケットになるのです。
現時点では、盗聴、または盗難によるデータ抽出以外の脅威は携帯電話にはありません。しかし、高度化する携帯電話の機能が新たな脅威を生むハズです。セキュリティ確保と利便性の追求は反比例する・・・まさに携帯電話時代がそのことを証明しています。