-電子メールのウイルス対策-コンピュータウイルスは、持ち運ぶことのできる媒体やネットワークを介して伝染し、システム内で感染範囲を広げ、潜伏し、何らかのトリガ(切欠)によって発病します。最近では、インターネットを感染経路とするウイルスが最も多く、特に電子メールを媒体とするワームが近年発生したウイルス全体の80%以上になります。また、OSのさまざまなセキュリティホールを悪用した「複合型ウイルス」の登場により、ウイルスはまた新たな進化を遂げようとしています。
そんな中、ここではこの電子メールを媒体に感染を広げるウイルスに着目し、ウイルス対策の基本を再点検していきたいと思います。

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■電子メールを開くだけで感染するウイルス
多くのウイルス(ワーム)は電子メールに添付されて送られてきます。ウイルス対策ソフトはそれらの添付ファイルをスキャンします。スキャンの過程で定義ファイル(パターンファイル)のデータと一致したコードを発見した場合、それらをウイルスとして検疫もしくは削除する仕組みです。
しかし、添付ファイルがなくてもウイルス感染を引き起こすウイルスメールが存在します。電子メールのHTML形式の本文にウイルスが感染しているタイプです。特に、Microsoft社のOutlookではHTML形式のメールに埋め込まれた実行コードを、受信メールをプレビュしただけで勝手に実行させてしまいます。このときにマシンに適切なセキュリティパッチが当たっていなければ、そのマシンはウイルスに感染してしまいます。これらのHTMLウイルスに完全に対応できるウイルス対策ソフトはあまり存在しないもの事実です。ただし、テキスト形式の本文に感染させることは不可能であるため、電子メール受信の設定は「テキスト形式のみ受信」を選択することが大切です。この設定は有害なSPAMメール対策にもなるため、小中学校をはじめ多くの学業機関で採用されています。

■安全な添付ファイルの扱い方
メールのファイル添付機能はとても便利なものですが、既述のようにとても危険な機能でもあります。では、このファイル添付機能をどのように利用していけばよいのでしょうか。
添付ファイルがテキストファイルや画像データであれば、ウイルス検査を行う必要はないのですが、WordやExcelのようにマクロ機能を持った「アプリケーションファイル」や、実行形式の「プログラムファイル」であれば必ずウイルス検査を行う必要があります。この作業は殆どのウイルス対策ソフトがデフォルトで自動に行ってくれます。ただし、実行形式のプログラムファイルであるトロイの木
馬は、ウイルス対策ソフトの定義ファイルだけでは完全に発見できない可能性があります。差出人が不明の添付ファイル付きの電子メールは、迷わず捨てるということを心掛けましょう。これは添付メールを送信するときにも同じことが言え、安全なファイルを添付するときは本文や件名でそのことに触れることも今後のモラルとして定着しつつあります。
※また、.zipとして圧縮されてくるウイルスもありますが、特にSymantec社のウイルス対策ソフトではこれらの圧縮されたウイルスに対応し検知します。

■送った覚えのないメールが返ってきた!
最近のウイルスの中には感染技法の巧妙さに磨きがかかり、送信元を偽装するタイプが登場しました。ウイルスに感染してしまったマシンは、その瞬間にメールサーバとして機能し、そのマシン内にあるアドレス帖から勝手に差出人と受取人を選んでウイルスメールを送り付けます。
大手のインターネットプロバイダでは、契約したユーザへの付加機能としてウイルス駆除を行ってくれます。ユーザに送られてきたウイルスメールを差出人に送り返してくれる仕組みを持っています。実はこのことがウイルスを広めてしまう原因になると多くの管理者は懸念を抱いています。差出人を詐称するウイルスに対して、プロバイダ側がその正規の差出人にウイルスが添付されたメールを送ってくるわけですから、どちらかというと差出人に選ばれた人が多くの被害を被る可能性が生じてきます。しかも、「あなたから送られてきたメールはウイルスに感染していました」なんて記載もされてくるわけですから、もう何がなんだかわからなくなってしまいます。今後のプロバイダの態勢変換を期待するしかないのですが、未だ課題にも挙がっていないのが現実です。現行は、これらの返信メールに対してもウイルス対策をしていかなければならないのです。