−デジタル・イミューン・システム−コンピュータウイルスの進化の中で、最も重大な脅威をもたらしたものがワームの登場です。もともとウイルスとは、一台の感染マシンがフロッピーなどの媒体を介して人の手によりジワリジワリと他のマシンへ感染を拡げていくものでした。しかしワームは、電子メールやネットワークを利用してより迅速に感染域を拡大していきます。また、中でもポリモーフィック型ウイルスは、感染していく過程において自分自身を変化させていくため、従来のアンチウイルスソフトでは検知することが非常に困難でした。
急速な進化を続けるコンピュータネットワークとウイルスに対応すべく開発されたのが、デジタル・イミューン・システムです。

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■デジタル・イミューン・システムとは?
デジタル・イミューン・システムは、長年IBM 社が開発を進めていたニューラルネットワークシステムを生かした近未来型の対ウイルスソフトウェアでした。この独自の自動免疫システムを基盤に、シマンテック社のアンチウイルス製品を組み合わせて完成したのが現在のデジタル・イミューン・システムです。
デジタル・イミューン・システムでは、NAV(Norton AntiVirus)・SAV(Symantec AntiVirus)がインストールされている全てのサーバとクライアントマシンが組み込まれ、これらのソフトウェアはそれぞれバックエンドシステムとして稼動します。
一台のマシンが何らかの理由で未知のウイルス(不審なファイル)を検知した場合、インターネットを経由してシマンテック社の解析センターにそのデータが送信されます。そこでウイルスデータは自動的に解析され、さらにワクチンソフトを自動生成してユーザに送り返します。そして、そのワクチンソフトを定義ファイルに取り入れて、全世界のユーザに配布される仕組みが実現するのです。

■アンチウイルスソフトの変遷
未知のウイルスが発見されたとき、そのワクチンが作成され、対策手法が確立するまでの時間の短縮が、各セキュリティベンダにとっての大きな課題といえます。現在では、デジタル・イミューン・システムの実現により、ほぼリアルタイムのウイルス対策が可能となりました。ソフトウェア単体でのサービス提供だけではなく、インターネット技術を利用した継続的なサービスという形式にシフト
してきました。
更に大きな強みとしては、バックエンドを構築(クライアントにソフトをインストール)してしまえば、ウイルス対策だけではなく、モジュール化されたソフトウェア自体も配布できるということです。定義ファイルだけではなく、それを効果的に動かすための最新のスキャンエンジンも同時に配布できるわけです。

■ウイルス侵犯時のライフライン!
電子メールは、インシデント発生時(緊急事態発生時)には信頼できる通信手段ではなくなります。なぜなら、ウイルス感染の拡大を防ぐために暫定的な予防措置としてメールシステムを一時的に停止する企業があるからです。また、現実的にワームなどの動作によっては、メールシステム自体がダウンさせられてしまうことも想定されます。
デジタル・イミューン・システムでは、クライアントとウイルス対策サーバ、そしてベンダ(シマンテック社)との間で、安全なHTTPベースのプロトコルを利用しています。通信アーキテクチャにはSSLをベースとして、全ての通信データの秘匿性を確実に保護してます。また、一つの新種ウイルス(または不審データ)に対して、数十台のサーバを使用して解析を行うことも可能で、複雑なポリモーフィック型ウイルスにも容易に対応しています。

以上のように、クライアント型ウイルス対策ソフトは、連動型ウイルス対策ソフトに進化しました。このことにより、新しいウイルスの脅威を逸早く解析して対策を行える体制が整いつつあります。これらのウイルス対策ソフトをセキュリティ対策の一つとして企業などのネットワークシステムに組み込むことで、より安全なインターネット利用を実現することが一般的になりつつあります。