ウイルスの作成者−ウイルスを作る人たちの心理−現在、世界には約68,000種類以上ものコンピュータウイルスが存在し、毎日のように新種のウイルスが誕生しています。インターネットの普及によって、コンピュータが生活の一部となった現在、ウイルス対策などのセキュリティ意識が高まりつつあります。ではなぜ、ウイルスの感染被害が増加し後を絶たないのでしょ
うか。また、誰が何のためにウイルスを作成しているのでしょうか。ここでは、ウイルスの作成者たちの心理を考えてみたいと思います。

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■ウイルスを作る理由
現在までHappy New YearやMelissa、CodeRedなどさまざまなウイルスが登場してきました。最近のウイルスは構造自体が非常に複雑に作られたものが多く、それらはトロイの木馬型ワームと呼ばれその感染力だけではなく破壊的な感染症状をもたらすものも存在します。これらのウイルスは自然界にある自然発生するウイルスとは異なり、ウイルサと呼ばれる人間の手によって作成されます。彼らはなぜ危険なウイルスを作り世に放つのでしょうか。
ウイルサが意図的にウイルスを作る理由には、以下の動機が考えられます。
 ・サイトに対するアタック/憎悪
 ・有名になりたい
 ・ジョーク/悪ふざけ
 ・政治声明/宗教的コマーシャル
 ・実験/知的好奇心

社会的に上記がウイルサにとって満たされることはありません。反対にマクロウイルスなど、特定の製品にターゲットを絞ったウイルスなどはその製品の脆弱性を利用したものであるため、製造メーカにとってはバグフィックスの漏れを提供されることとなります。多くのバグを含んだままの製品を販売してはいけないという警鐘として前向きに捉えることもできます。しかし、感染結果としてデータの破壊などの致命的なダメージを与えるものはやはり裁かれるべきものであり、ユーザが望んでいない動作すべてがウイルスの忌まれるところです。

■ウイルスはなくならない
ウイルサとアンチウイルスベンダは互いに「イタチゴッコ」と表現されます。かつては、アンチウイルスベンダがウイルスを作成しているのではないかと中傷されましたが、大物のウイルサが逮捕されるたびにこの噂は消えたようです。インターネットがこれほどまでに実生活に根付いてくると、プログラミングの知識の薄い若者がウイルサの真似事を行う風潮が生まれます。彼らは「ハッカー」という人種に憧れを抱き、ウイルスを自動生成するアプリケーションやポートスキャンプログラムを入手してハッカーやクラッカーに「なりきり」ます(「なりすまし」などの言葉が一般的に使われますが、この「なりきり」という言葉も今後使われるようになるのではないでしょうか)。そんな彼らのことをセキュリティ用語で「スクリプトキディ」と呼んでいます。彼らの興味本位な行為が、ネット上の無駄なパケットを生み、結果的にユーザである我々は不利益を被ります。しかし、彼らのツールで作られるウイルスは非常に完成度が低く脆弱で、安価なアンチウイルスソフトウェアでも容易に検知され世の中から瞬間にして消えてなくなります。世を騒がすウイルスは、高尚な(この表現が正しいかは別にして)ウイルサによって丁寧に作られるもので、感染ターゲットに狙いを定めてインターネ
ット界に放ちます。CodeRedは世のサーバを狙い、Klezはすべてのインターネットユーザを狙ってきました。ウイルサとは依頼主のいないスナイパーのようなものです。相手が不特定多数というところがウイルスの怖いところです。

ウイルスが誕生して約20年が経ちました。コンピュータの進化とともにウイルスは誕生し続けます。世界的な法的罰則規定がない限り、ウイルサは自由に新種のウイルスを開発し続けてしまいます。ましてはウイルサのコミュティも形成され、複数の有能なウイルサが大型ウイルスを作成しているとの報告結果も出ています(米国FBI調査)。既述した「イタチゴッコ」はウイルサとアンチウイルスベンダ間の比喩だけではなく、インターネット利用者全体との攻防に発展しなければならない事態になってくるのではないでしょうか。ユーザは決してウイルサを賞賛してはならないのです。